柳ヶ瀬「BAGU」のHPより転載させて頂いております。

壁の向こうのカンペイさん

クラ
KURO(vo) 藤井孝紀(p) 名古路一也(b) 猿渡泰幸(ds)

名古路さん ちょうど3ヶ月ぶりのクラだ。この店、古い木造家屋(蔵)を改装して作られたカフェである。 古い家にはその家を守護する狐狸妖怪の類が棲みついていると言われているが、クラも例外ではない。 みっちゃんと僕はクラに到着して目を疑った。なぜならライブ前だというのに既に満席状態だったからである。 何度数えても同じ人数なので座敷わらしではない(数えちゃいませんが)。みんなれっきとしたお客さんだ。 「ご予約は?」「してません!」。イヤーな予感がしたが、何とか空いている席に通される。 このあたりから「もののけ」の気配をビンビン感じ始めるわけだが、ライブが始まってやっとその正体が明らかになった。 カンペイさんのピアノは聴こえるが姿が見えない。マスターのドラムは聞こえるがやはり姿が見えない。 名古路さんのファンキーな姿も見えない。「んっ、どうしたんだろう?」と目をこらしてステージの方を見ると、なんとそこには「妖怪ぬりかべ」が どっしりと腰をおろしているではないか。このぬりかべ君が邪魔をしてステージがまったく見えない。 これがクラを守っている妖怪だったわけだ。 せっかくなので「妖怪ぬりかべ」についてちょっと補記しておこう。


ヌリカベ君
後ろ姿。耳がありネコにも見える。
妖怪ぬりかべ
古い家に棲みつき音曲を好む。普段は家の一部のような顔をしているが、実は妖怪である。 いつもステージの真横(特等席)に腰を下ろしているため、彼(証拠はないが多分オスだろう)の後ろに座るとまったくステージが 見えず、ちょっとアセル。「予約をしなかった時にこの席に通される」と古来言い伝えられているが、 「無垢な心」を持った人にはぬりかべ越しにステージが見えるという。 事実、僕等と一緒に座っていた子供は、まるでステージが見えているかのようなはしゃぎようだった。 残念ながら僕には見えなかったし、みっちゃんやヒラクさんにも見えなかったはずだ。もちろんCCさんにも。 にもかかわらずまるでステージが見えようが見えまいがおかまいなしといった感じのはしゃぎようだった。(ほっといてくれ!)

ぬりかべ君は僕らの心に「汝ら、心眼を開け!想像力を働かせよ!」と語りかけているようである。 僕は素直に目を閉じて音に集中した。 てなわけで、ライブは「solar」でスタート。カンペイさんはほぼ毎週聴いているし、名古路さんも先月名古屋で聴いている、 マスターは言うまでも無く、黒田さんも最近聴く機会が多い。つまりステージが見えなくてもその様子は簡単に想像できるわけだ。 ということで目を客席に向けてみた。ステージに釘付けになっているお客さんの表情を、眺める というのも不思議な体験だったが、みんな一様に吸い込まれるような表情でステージをにらんでいる。 僕もいつもこういう表情で見ているのだろうか・・・。イカーン!余計なことを考えてはぬりかべ君の思うつぼだ。 「body and soul」、「god bless the child」とカンペイさん御得意の曲が続く。 その間にステージ下で缶ビールをグイッとあおってスタンバっているクロちゃんの姿が見える。 カンペイさんのブルース・リフとともに満を持してクロちゃんがステージへ。まずはハーモニカでリフに絡んでいき ブルースを一曲やってくれた。この人がステージに上がると辺り一面、完全にクロ色に染まってしまうのもクロちゃんの人柄のせいであろう。 「georgia on my mind」、「on green dolphin streer」と軽妙な岐阜弁トークを駆使しながら楽しいステージが続く。 1セット目最後は、「my funny valentine」。この時期よく耳にする曲だ。時期的に今日辺りが聞き納めか・・・。

師弟 1セット目が終わって空く席を虎視眈々と狙っていた僕は、ステージ正面の席が空いたのを確認して すぐさま店員に申し出た。「あそこに移っていい?」「あのーご予約は?」「してません!(きっぱり)」 またしてもイヤーな予感的中。なんと入れ替え制だったのだ。追い出される前にそそくさとぬりかべ君の後ろに退散し 何食わぬ顔で2セット目も居座ることに決める。それにしてもクラの集客力は凄い!岐阜にジャズを聴く人間がこれほど いたとは・・・。あまりの人に目を回しそうになっていると、意外な人物が目に飛び込んできた。 後藤浩二さんが、まるでそのへんを散歩していた近所の人が間違えてフラッと入ってきてしまったような 地味な格好でたたずんでいる。岐阜県某所でライブを終えた帰りとのこと。ラッキーである。 これもぬりかべ君の霊力のなせるワザか。そんな喧噪のなか「scraple from the apple」で2セット目が 始まり店内が一気に静まりかえった。「mexico」、「night train」、「there will never be another you」と様々なジャンルの 曲でお客様のご機嫌をうかがう。僕らはだんだん演奏そっちのけになってきて、本格的に宴会を始め出したとき 後藤さんがステージに上がっていった。リリカルなソロピアノが延々続き、出てきたメロディーは何と動揺「ふるさと」。 うーん、いいなー、なんてしみじみしていられない。またソロピアノに戻って次に飛び出したのが「stardust」であった。 親しみをこめてムーミンと呼ばれる心優しきピアニスト。そして名古屋ンバーワンの実力者。今日は飛び入りの1曲入魂。 お客様にはどう写ったろうか。後藤さんの演奏が静かにおわり、岐阜ナンバーワン、名古屋ナンバーツーのカンペイさん(あくまで僕のなかの順位です)が ピアノに戻り、「bye bye blackbird」でライブを締めた。アンコールはクロちゃんの指示のもとすべてのPA機器をスイッチオフ。 完全に楽器だけの音をバックに生声で「my one and only love」を熱唱。ぬりかべ君越しにも微妙な節まわしまでちゃんと聞こえた。 この日は、3セット目はなかったが0時過ぎまでクラで飲んで、ミュージシャン全員でBAGUになだれ込む。 今日は同級生3人組ということもありテーブル席でかなり盛り上がっていた。 いやはや今日も楽しい夜をありがとうございました。

ゲスト後藤さん 同級生3人衆
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