2006年5月1日

 詩 人

榎本 初によるのページです



   カスタードプディングレイアウト

 午後二時五十七分、ほのかに焦げた光がカーテンの隙間から射し込んでいて、部屋の真ん中あたりで弾けていた。魔法のビー玉で遊ぶ太陽の子どもたち。微笑みの行進が始まる。羊の群れが東の空へ向かって泳いで空へ遠くへ広がってバニラフレーバー。
 カラメル色のまなざしに毀れてしまいそうな頬を撫でながら、機械時計の刻む音を拾っていく。ガラスの容器から零れた卵を五線譜に焼き付けて、銀の匙で掬っていく。ミルクの匂いを剥がしていくと、きっと涙に濡れた部屋が見つかる。白い砂浜を満たす結晶からあふれでた滴は甘味だけではない。甘味だけではないことに気付いて、気付かされて頬を赤らめて、窓のほうを、光の射すほうを振り向く。羊飼いの少年なんていない。尾花と歌う風。
 やがて、とろとろの夕日につつまれて、微笑みの行進が続いていく。

                  二〇〇五年十月六日
ナカネコ!
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