2005年6月2日

 詩 人

榎本 初によるのページです



   王宮の桜

 桜の花ひとひらが渡りゆく空へ、祈る。
 雨垂れが甘辛い午下がりに、ビル・エヴァンスのピアノを耳朶へにじませていて、ふと、瞼の裏に焼きつけられている花が海王星に咲くことを知る。空のあなたにネプトゥヌスは居て、雲の波間を飛び交う水繁吹に浴している。久遠の河口から咲きひろがる花に濡れている。銀河の奥のほうからひかりを放つ歓びの花、桜が舞い、舞う花の空が匂う。海の匂いとも想う。
 咲いていく、散っていくというのは、あなたへ届く瞬発力に違いない。ひとひらの花、フォルティッシモ、胸のポケットに秘めて。

                  二〇〇五年四月十五日
ナカネコ!
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