2005年6月2日

 詩 人

榎本 初によるのページです



   ファーストクロッカス

 ちいさな太陽が、何もかもなくしていた土を、何もかもなくしていたかのような土を、耳をすますと何か口ずさんでいて、みつめて、みつめている。
 クロッカスのつぼみの重さに気づくころ、やわらかな日ざしにとまどいを覚えるのは頭のすみ、胸の奥の何かが春の小走りに追いつけないから。何か、という、ことばにうまくいいあらわせない、ほぐせないもどかしさがつのるから。かといって、覚えなくてもいい公式をあてはめて数式を解くかのようにとびらを開けるのはただ、かりそめの想いをひけらかすだけ。
 ちいさなひかりにほほ笑みを返して、虹へ、虹のかかるほうへ歩いていけばいい。

                  二〇〇五年三月十五日
ナカネコ!
Copyright(C) 1998-2005 ENOMOTO Hajime. All rights reserved.