2004年12月1日

 詩 人

榎本 初によるのページです



   炒飯グリーン

 雨が降る街の真ん中、地下三階にある鉄の扉の奥に心を塞ぐ。束の間の休日にどろんとした鉛色の塊が垂れこめているのは日常の働きぶりの物足りなさの所為ではなかろうか、と勘ぐることほど間抜けなことはない。
 仕方なく、そう仕方なくランチを食べるのだ。食べるという営みすら煩わしく思われて、それでも冷蔵庫からレタスを取り出して俎板の上に載せる。玉葱も載せる。切り刻んで皿に盛る。炊飯器に残っている御飯を別の皿に装い、生卵を御椀に割る。イザイのバラードを鳴らせ。中華鍋に火をかけ、胡麻油を敷き、豚のミンチを撒き散らす。掻き雑ぜ卵を垂らして玉葱入れて、御飯を御玉で壊していく。鶏がらの粉と豆板醤一匙ずつ。レタスの山瑞瑞しく。スクランブルルルファイファイアー、金属音を打ち鳴らせ。
 食べる前に、皿に御椀に御玉に中華鍋、洗えるものを洗っておく。数日前に「枯露柿」というタイトルで詩を書き始めたのだが、滞っている。詩作に不調などありえないと信じきっていながら、

 天窓を舐め尽くす蘇生の果実
 枯れ葉を透かした向こう側にくすんでいる日

などと書いているのは、あなたへの恋心が冥王星にすら届かないのと同じで、腑甲斐無い。雨に背を向けると虹は見えない。
 ランチに戻ると、青青としたレタスが食欲をそそる。少し油っぽい。

                  二〇〇四年十月三十日
ナカネコ!
Copyright(C) 1998-2004 ENOMOTO Hajime. All rights reserved.