2003年2月24日

 詩 人

榎本 初によるのページです



  櫻人

仕事終わり帰り独り地下鉄の駅から上がって
くると終わりの段に女の子がまだ高校生かな
あどけない瞳を色の多い雑誌ヘ落としていて
何か楽しそうな何処か寂しそうな何も言わず
腰を落としていて脇を過ぎていく大人たちは
街灯へ融けていく燃えていく彼女のルージュ
眩くて微かによろめいて立ち止まり空を見て
空いた腹に請われていつもとは違うほうへと
歩き出して牛丼でも食べてなんて硝子張りの
向こうは学生やらサラリーマンやらで一杯で
仕方なく通り過ぎてまだコートを纏った紳士
酔いどれの隙間をぬけて横断歩道の先は閑静
住宅街をぬいていく小径こみち入って僕の前でふと
歩みをめた男一人もう四十代後半だろうか
薄紅おもて照らされて目を細めて男は何も言わず
佇んでいて月影忘れてほむら咲かせている花

              二〇〇一年四月七日
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