2004年1月1日

 詩 人

榎本 初によるのページです



  雨弥生

胸の前に軽く腕を突き出し外套の袖の中から
時計の針はどこを指していたのか円いガラス
濡れたのと手の甲に一粒落ちたのとで雨や宵
のサイレントの向こうに一つ傘が融けていく

如月が速いというのはそれが去りゆく時瞬く
間に感じるのであってそれは日の沈む回数が
ただ少ないというだけではなく春へ急ぐ足音
ひかりを追い今届くからで肌を刺す雨や酔い
を忘れた梅が草木を彩る珠玉たまや薫りと躍る花
になるんだと思いながら身震いしながら左肩
濡れながら来る月に歌う白い傘が揺れている

              二〇〇一年三月一日
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