2004年1月1日

 詩 人

榎本 初によるのページです



  くれない

紅葉こうようの美しさなどというのはどこにもなくて
ただ楓の葉自らが頬を火照らせていくだけで
山野に錦絵が描かれていくなど人が言うのは
思慮がない筋違いもいいところであって或は
人がたかだか一万年の青二才に過ぎない証で
あるとも言えてこの蒼い星は三十八億年の間
たゆみなく謳う踊る生命万物主演の舞台である

舞台の端に佇んでいる僕の瞳が朱色ではない
赤いのでもない紅の一枚に堪えられないのは
秋空とのコントラストが目映いからではなく
秋空との別れ荼毘の炎が揺れるからでもなく
ただ紅の色をしているからというだけであり
他に理由などなくてそれは紅色の葉が美しい
という意味ではなく意味なんて在りはしない

ただ生きているというだけでよいのであって
紅の葉はただ生きていて歌であり舞であって
暮れることのない光を浴びているのであって
僕らは弱輩者は意味というものを添えないと
日が沈んでしまうと思い込んでおり臆病者で
弱虫でステップを踏んで小股でぎこちなくて
形振なりふりかまわず冬へ向かう顔が紅潮していく

              二〇〇〇年十一月一日
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