2004年9月3日

 詩 人

榎本 初によるのページです



  雨音

にわかに雨脚が速くなる
蛍光菅の環の奥から垂れた糸を引く
不自然に白い部屋が水浸しの空の真ん中に沈んでいく
無口なフィラメント
冷たい熱電子
電光を浴びた脊髄が右の肘に鈍い痛みを走らす
導火線にティンパニー
爪の先の向こうまで痺れている
あなたの指先を湿らしている

悪魔の仕掛けた罠
変ホ長調とクラリネット
天が存在した
わたしは間違えているかもしれない
思考しないことを怖れている
思慮することを突き放している
抱擁と告別が交わり濡れている
銀河に薫る吟醸の雨垂れを掬い取る
あなたの鼓動に頬摺りする

              二〇〇四年六月二十一日
ナカネコ!
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