1999年3月26日

 詩 人

榎本 初によるのページです


 ダイアローグ - 僕は君と話したいんだ

 烈風が吹きすさぶ荒野の中で
 髪は乱れ 服は破れ
 跪いて 天を仰ぎ
 声を嗄らして 死を叫ぶ

 そんな君の姿を
 僕は
 抛って行くことができない

 僕は君と話したいんだ
 そう
 君というただ一個の人間と

 陽光が届かない樹海の奥で
 枯葉は重なり 泥は濁り
 頭を抱えて 地を睨み
 涙を流して 生を歎く

 そんな君の姿に
 僕は
 立ち止まらずにはいられない
 
 僕は君と語りたいんだ
 そう
 君というただ一個の人間と

 この詩は君との対話なんだ
 総ての人に書かれたものでは
 断じてない
 一般的な 抽象的な 曖昧模糊な
 差異を捨象するような
 そんな残忍刻薄な態度を
 僕はとれない

 君は問うだろう
 生とは何か
 死とは何か

 僕は答えるだろう
 生とは君自身のこと
 死とは君の眼前にあるもの

 君はまた問うだろう
 自分自身とは何か

 僕はまた答えるだろう
 君自身とは
 それは
 君自身が決めること
 そして
 君の眼前にあるものとは
 それは
 君が勝ち取ると決めたもの

 君が荒野で叫んだものは
 死ではない
 逃避に過ぎない

 君が樹海で歎いたことは
 生ではない
 外物に過ぎない

 僕は君と話したいんだ
 そう
 君というただ一個の人間と



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