火星年代記

まんまじゃないですか。
どっからどう見てもSF、SF丸出しです、隠す気ゼロ!!
まあ、隠す必要なんざないですからね。


本作は
SFオールタイムベストなんか企画しましたら
必ず上位に姿を現す大傑作なのだそうで
読んでみて納得
ここからSFの扉は開かれるのだ!!ってくらい
素敵なのでした。


書いたのはレイ・ブラッドベリ
SF界の詩人
本人さん、本作はSFではないとか口走ってるようですが
便利なのでSFって呼んでおきましょう。


2030年1月から2057年10月までの
火星火星人地球人のお話。
こう見てみると、たった30年足らずの期間しかありません。
30年足らずの間に色々あったなあ。
ちなみにこの西暦はですね
改めて本を出す機会に、修正したようです。
流石に1999年からスタートじゃ無理があると
後々実感したのでしょうかね。


沢山の短編で構成されているので
非常に読み易い、良い。
ばらばらだった短編を並べて
間を繋ぐお話を書いて
そんな風にして一つの長編に仕上げたようです。


さて、どの話も印象に残り過ぎてとんでもないのですが
タイトルだけでも書いておきましょう。


ロケットの夏
プロローグじゃないですけど
完璧な導入部ですね。
何がどうなら完璧なのかなんて訊いてくださいますな。
この短い、たった1頁程度に
わくわくする分だけの情報を撒いておいた
その見事な手腕に
惚れ惚れです。


イラ
イラというのは、火星人夫婦の妻の方のお名前。
地球人の来る予知夢?を見てから
そのことに夢中なのです。
火星でも地球でも
夫婦ってもんは似たりよったりな様子。
実際にやって来た地球人達は
旦那がやっつけちゃいました、えいやー。


夏の夜
火星の住人達に異変が?
何語かも分からない、何を言っているか分からない
なのに口ずさんでしまう地球の言葉。
何か恐ろしい予感がする。


地球の人々
全く歓迎されない地球人御一行。
精神異常者と(無理矢理)間違われ
全ては幻覚だと片付けられ
挙句殺され
その幻覚症が自分に感染したと思い込んだ心理学者は
自殺してしまうのでした。


納税者
火星に熱烈に行きたがっている者。


第三探検隊
火星に来たと思ったのに此処は地球?
しかも過去の。
ノスタルジア。
過ぎ去りし日々の中に置いてきた大切な人々の姿。
死ぬと人間は此処へ来るのか?
此処で再び生きてゆくのか?
皆、それぞれの懐かしい家に帰り
家族や友人と時を過ごす。
だがこれらは本当に本物なのか?
これらは火星人のテレパシーと催眠術と自分の記憶が生み出したものなのでは?
これは奴らの恐ろしく巧みな計画の一部なのでは?
既にもう遅過ぎた。
翌日、どの家からもが担ぎ出され
その日は皆の休日になったのでした。


月は今でも明るいが
火星人壊滅の原因は水疱瘡
地球人の持ち込んだ菌によって。
なんてこった。
残された火星の文化に触れ
此処を侵してはならないと考えたスペンダーは数人の仲間を殺した。
彼の考えを理解し、共感しても
彼の行動を放っておける立場にないワイルダー隊長
逃げられるよう計らってやったのに
スペンダーは逃げなかった。
逃げずに、隊長と約束を交わし、殺されていった。
隊長は彼を忘れることができないだろう。


移住者たち
どんどん地球から火星へ。


緑の朝
新しい土地で暮らすには、試行錯誤が必要だ。


いなご
どんどこどんどこ火星へやって来る地球人。


夜の邂逅
火星人と地球人が出くわすのですが
そこで不思議なことが起こる。
会話しているし見えているのに、触れることができない。
相手だけでなく、相手の持ち物も。
更に、話も噛みあわない。
互いの言う町や祭りは、相手には認識されていないのだ。
次元が揺らいだのか何なのか。
不思議なままに、別れる二人。
夢だったのか、幻か。
個人的にとても気に入っているお話です。



人々の群れは波のよう。


火の玉
ザ・宗教。
教えを説くのではなく、教えを乞うことになった聖職者たち。
何かを教えようなんて、そもそも傲慢な気もするが。


とかくするうちに
火星を地球人流に変えてゆく。
タイプライターを叩くのは作家であり
ペンを軋ませるのは詩人である、とは
それは確かにそうなのだけど
改めて素敵に思える区別の仕方じゃないですか。


音楽家たち
子供達というのは怖い物知らずな生き物
というより少々怖い物が好き。
恐怖を楽しむ余裕があるのか。
腐肉や白い骨すら玩具。
それらが片付けられてしまうと
また新しい楽しみを見つけなければならない。


荒野
女の人の大半は、矢張りを求めているのだね。
地球でも火星でも。
何処でも。


名前をつける
そうそう、名前をつけないとね・・・。


第二のアッシャー邸
怪奇小説みたいな面白さ。
5万冊もの本を有無を言わさず焼き捨てられたら
僕なら気が狂うね。
きっちり復讐を遂げられて良かった。
幻想的であったり、非現実的なものは排除される世の中なんて
地獄だな。
実際には有り得ない、かと思われる。
大人も子供もファンタジーが大好きだし
科学の発達で表現の幅が広がったお陰で
ますます隆盛の兆し。
発展し続けるその限界はまだ遠い、気がする。
そして人間の想像力に限界は限りなく、ないと言える。


年老いた人たち
遂にお年寄り降臨。


火星の人
個人的に、本作中、最も感動的なお話。
死んだ筈のトムが帰って来た。
が、トムではない。
トムの形をしているけれど。
そう理解しつつ、夫婦は彼をトムとして受け入れる。
もう一度坊やを失うなんて耐えられそうにない。
しかし彼はトムであり
ラヴィニアであり
デクスタでありー
ジェームズであり
誰でもなかった。
人々の大切な、失われた誰かであり
その誰でもなかった。
彼は混乱の末、死んでしまう。
もう一度、トムは帰って来るのではないか。
しかしそのようなことはなかった。
最後の一行は秀逸です。
痺れました。


鞄店
地球では戦争が始まりそうである。
あらゆるものから火星に逃げて来た人々も
帰るだろう。
故郷へ。
鞄店の主人神父が会話する。
神父は鞄をひとつ、取り置きする。


オフ・シーズン
どうやら地球の一部が爆発した。
念願のホットドッグ・スタンドだけれど
これからオフ・シーズンになりそうである。


地球を見守る人たち」
地球人は、地球が故郷なのですよ、やっぱり。
鞄は一つ残らず売れました。
主人は遅くまで店を開けておいたのだ。


沈黙の町
火星に残された地球人のお話。
最後の一人かもしれない男が、誰でも良いから人を求める。
すると最後の一人かもしれない女が見付かる。
が、とはいえ
生理的に無理なものは無理なのであった。
一人より二人の方が、よっぽど辛いこともあるさ。


長の年月
本作は、物悲しい話が少なくないが
これもそのうちの一つ。
あのワイルダー隊長も出てきます。
火星に取り残されていたハザウェイを隊長が発見。
彼は、家族が居なければ今まで生きて来られなかった、と言う。
だがおかしい。
家族の年齢が。
と、娘2人息子1人4つがあった。
では話し、笑い、踊る彼等は何者なのか。
ハザウェイは家族を作り上げたのだった(器用だなあ)。
そして隊長に見守られながら、ハザウェイは死んだ。
個人的に好きなのは
ハザウェイの死後、隊長達が火星を離れるにあたって
あの4人をどうするか、となった時
あのまま残してゆくのかと問われた隊長の
なんとか始末をつけてくれたら
きみはおれよりえらい人間だ

という台詞。
そして拳銃を持って4人の元へ行き、戻って来た部下の台詞、特に末尾。
ああ、あの連中を破壊したら殺人です!
普通なのだけど、そこが良い。


優しく雨ぞ降りしきる
このタイトルは訳者さんのセンスが爆発してますね。
つまらない表現になってしまいますが
素晴らしいの一言に尽きます。
崩壊の美学、ここに極まる、といった感じ。
無人であるというのに、こんなにも騒がしい!!
しかしこれぞまさしく、静寂の音って奴かもしれません。


百万年ピクニック
なんだこのタイトル。
あまりのセンスに眩暈がしますね!!
僕なんかには一生かかっても思いつけない・・・!!
地球は駄目になったそうです。
ラストの場面は最高です。
一冊丸々読んだからこその感動があります。
余韻に浸っていたい、いや浸るしかない。
最後に相応しい一文がかっこ良過ぎて、何故だか悔しくなるほどだ・・・。


SFって
火星とか宇宙船とか、非日常なものばっかりで
物語に入り込めるのかよと思っていましたが
杞憂でした。
寧ろ好きだSF。
食わず嫌いなんていけませんね、やっぱり。


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