幻視の系譜

自分が幻視者でない故
ファンタジックなものを日常に見付けられる方は尊敬致しまする。
たとえばその辺に紙風船が転がっていても
僕は、あー紙風船ころころ〜、くらいにしか思わない。
でも見る人が見ればそれは
赤地に若草色の模様の入った着物の、幼い少女であったり
遠くへ去った過去の灯になったり。


そんなもんこの目には映りません。


日本幻想文学大全の小タイトルが付いてるのは
全部で3冊あるようです。


こちらには21の短編が収録されております。
どれもこの本の雰囲気を作り上げる重厚で個性たっぷりな作品群。
それにしてもビッグネーム達〜!!
文学初心者というか特に何も知らない僕でさえ
本作にお名前連ねられてる面々
そのお名前くらいは知ってるぞ〜って、うむ。
大物達でござい。


書きたくなっちまったお話だけ抜き出して書こっと、いぇ〜い。


化鳥
なんて可愛らしい文章で綴られているのでしょう!!
初の泉鏡花体験。
何年か前の、本なんてち〜っとも読まなかった時は
いずみきょうか、って響きだけで勝手に
お綺麗な女性様かと思っておりました。
違った。
繊細そうな幻視家の男性さんでした。
いつ知ったか忘れましたが、びっくらこいちゃったです。
けども
こんな可愛らしい書き方ができるなんて乙女よな。
冒頭の「愉快いな、愉快いな」からして面白い。
考え方の豊かな母様とその子供の会話だけでも楽しめる。
先生とのエピソードも
現実には面倒だけど、微笑ましい。
だって、先生、先生より花の方がうつくしゅうございます
ってこれはそりゃ〜世の女性は怒りますわね。
こんな他愛もない事実でな。
自分を助けてくれた五色の翼の生えた姉さんに会いたがって
また川へ落ちてみようかなどと考えてみるも
だけれども、まあ、可い。」と
母様がいらっしゃるならまあいいと終わるところが素敵。
とても気に入りましたとさ。


牛女
童話というか寓話というか昔話というか。
小川未明といえば。
すんなりとした感動があって、これといって何ってこともないのに
なんか好きなのですよね。


猫町
江戸川乱歩が絶賛したらしい、萩原朔太郎の書いたもの。
このタイトルは超有名でしたから
やっとこさ読んだなあと
そんな意味での満足感もちらりと見え隠れ。
このような書き方なので当然なのでしょうが
繰り返し説明してくださって親切だなあ!!
ここまで鮮烈な体験はないのですが
いつもと違う角度からこんにちは〜して迷子になったことは
頻繁にある・・・!!
しかし詩人たる者は常にこうなのですか。
僕って正常過ぎて少々落ち込みますよ。
猫の精の住む町になぞ、一生辿りつけそうにないぜ。


魔術師
どんだけの美形なのだあああ!!
結局どんななのだ!!
これは、観る人によってその姿は違って見えるというあれですね。
皆それぞれの、思い思いの美形を見てしまうという・・・それですね。
他のは何も読んだことないっすけど
谷崎潤一郎って方に勝手に抱いていた印象のとおり
のような作品でした。
知性と淫靡が生生しくて宜しいですね。
よくよく考えてみちゃあいけませんよねこういうのは。
感覚で読む、一気に読むのです!!


木魂
これを何と読むか僕は分からなかったのでした。
すだま、と読むそうです。
僕はこれ、好きだなあ!!
この片仮名の使い方、うむ、この方はお洒落ですね。
良い味が出まくりで、こりゃ真似できぬ!!
一言で感想を述べると
狂気
これに尽きます。
個人的には、堤の上から息子が父を呼びかける場面が好きですね。
何故だかぞっと、怖くなるのです。
呼びかけてる感じが非常にリアル。
数学が得意って設定も小難しくて、良いなあ。
文に記号とか式とか混じれ飛んでそれが
ページを開いた時のバランスというか
目に美しい。
なんでだかキセ子って亡き妻の名前まで恐ろしく思えてくる。
それは病。
夢野久作といえばドグラ・マグラでありましょう。
この短編の雰囲気だと読み易そうですが
果たしていつか読み終えられるかなあ。


蜜のあわれ
金魚。
金魚と飼い主。
終始、摩訶不思議な出来事が起こっている。
室生犀星って、詩人寄りかと思っておりましたが
小説家寄りだったのですね。
一人称が、あたい、の金魚が
可愛い人間の娘っ子に化けてお買い物行ったり
これは飼い主の書いた小説であると自ら口走ったり
境界を取っ払ってごちゃごちゃです。
全編に漂う儚げな雰囲気がノスタルジーを誘いますね。


妙な話
小話ですね。
ちょっとした怪談みたいなお話。
芥川龍之介、おお、大物ですね。


ひかりの素足
これはずっと読みたかったお話なのですが
宮沢賢治の短編集を購入しちまったので
今回はスルー。
返却期限があるので、短縮できるとこはしとかなきゃなのです。


片腕
本当はかなり怖い画面が展開されておりますよね。
突飛なことを書き切っちゃうなあ。
甘美な悪夢ってやつですか。
川端康成っつったらノーベル文学賞・・・くらいしか知識無かったのでね
ほほ〜、と。
う〜ん、皆、幻想的なもん書いてるのですね。
僕は他人の腕を借りるなんてまっぴらっすね!!
況して付け替えるなんて・・・やだぜ。
そもそも、腕がびろーんと全体露出してるってことが
俺は嫌なんだ!!
そういう理由で、こいつあヘヴィーに気味が悪かったんだぜ!!


Kの昇天
これは以前に読んだのですよ、梶井基次郎の短編集だかで。
この違和感のないチョイス。
当然、といった風で納まっております。


父を失う話
これも好きでありますよー!!
ただ、父を失ってしまうだけの
その日のお話なのですが
そのシンプルさが好きです。
背景も理由もその後も何もない、それが良いのだ〜!!
渡辺温、うむ。
この名前をできれば覚えておこう。


デンドロカカリヤ
何処となく外国チックな阿部公房
このタイトルのインパクトも凄いですが
冒頭1行目がまた凄い。
コモン君がデンドロカカリヤになった話。」
これは・・・!!
読み終えた後にこの1文を読むと改めて
うむ、そうだったなあ、と。
つまるところこれは、コモン君がデンドロカカリヤになった話、なのですね〜。


少女架刑
これも今回はスルー。
吉村昭短編集で読んだのでした〜!!


春の寵児
たった今の俺の状態。
緑川光に脳がやられている、この俺の状態。
真昼に迷う春の小路で
青年達よ、頑張りたまえ!!
それにしても優しい口調だなあ。


のページへ                                                                                    トップページへ