星を数えて

ちっさい頃に、あんまし本を読まなかったもので
想像力が豊かに育まれなかったんでしょうね。
その分を取り戻そうとするかのように
今になって児童文学に手を出してみる僕。


で、読んでみましたのがこの、星を数えて
これは・・・子供向けではないでしょう。
いや、子供も読めば良いですけど
僕は、大人になった今の状態で読めたことが嬉しい。


これを書いたのは、デイヴィッド・アーモンドという
なんとも香ばしいお名前の御方。
他にも数冊、この方の著書が並んでいたのですが
ぱらぺら〜っと覗いて、よっしゃこれだぜ!!と選んだのが
本作です、いぇい。


アーモンド氏ご自身の体験なのかフィクションなのか
混ぜこぜなのか夢なのか
現実的で厳しくて残酷で悲惨で、眉を顰めてしまうような世界。
優しくて、弱々しくて、やがて目の前からは消える世界。
19の短編が収録されているのですが
登場人物は、主人公と彼の家族、彼等を取り巻く色んな人々。
話によって時間は前後しますが
主人公(や他の人々)の日々の記憶というか
それらを読み進めてゆくにつれ
自分がこの家族のすぐ傍に立っていて
彼等の様子を黙って見詰めているような気分
に、なったようなならなかったような。
不思議な本だったなあ。


幼くして死んでしまった妹のことや
子供達の恐ろしい無邪気さ(いや、邪気はあるかな)とか
そしてこれは、僕の人生から丸っきり抜け落ちてしまっている
宗教、に関する事柄。
信仰って何なんだ???
悲しいのやら、やり場のない思いは何処へも行けずにぐるぐる。
うぐぐ・・・ぐががが〜
と、なりつつも
漂う穏やかな諦め。
この本の素晴らしい(と僕が感じる)部分は
宗教のことでも何でも
結局どのようにも片付けてしまわないところ。
何も押しつけず、何処へも導かない。
告発しているのでもなく
ただ、懐かしい家の匂いのする布にくるんであった出来事を
そっと開いて、手の平に載っけて
見せてくれただけ。
そんな感じ。
ただ、こんなことがあったんだよ、と。
でもこれは内緒だよ、と。


それにしてもなんて活き活きとした妹達なんだろう。
なんて可愛らしいんだろう。
守るべき存在というのは、こういう者達のことなのでしょう。
僕はロリコンじゃあないけど
そのあどけなさにつられて、つい顔が綻んでしまったり
はたまた抱き締めてやりたくなるような悲しさに襲われたり。
そうそう、随分と大人びて感じるお兄さんも
なんだか素敵だ〜。
母親は優しく、美しい信仰の人であり
父親は大きく、柔らかく
こういう人こそが尊敬すべき父親である
と、僕は思った。
僕の理想だなあ、このパパさん。


訳した方のセンスもとても良い、ああ、グッジョブ。
「あいよ」って、うん、異国の田舎って感じがして味がある。
それにしてもどうしてこうもさりげなく良いのだろうか。
こんな文を書くのだから
夢の中でか何処でだか
きっと本当に天使の一匹でも目撃していそうだなあ。


少年時代の冒険、罪悪感の発見、他者への労わり、子供らしい我儘
信仰と服従、成長と喪失、面影と思い出。
僕にとっても、もう過去になってしまった時代を
いつかの僕が駆けまわっていたのだなあって
読み終えると
その頃の僕の足音も遠のいて行ってしまった。


深刻な内容が多いのにも関わらず
読後感はそこはかとなく静かに澄んでいる。
不思議不思議。
これは是非とも、僕の書棚(そんなもん無いのですけどね)に加えたい。
いつかは手に入れたい一冊でした。


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