遠い声 遠い部屋

結構前に映画を観ましたよ。
「カポーティ」、そのまんまなタイトルですね。
トルーマン・カポーティが「冷血」を書き上げるまでのあれやこれや。
僕はカポーティなんて誰それ状態でして
「ティファニーで朝食を」の著者だと言われても
オードリー・ヘプバーンの顔がぷかりと浮かんで消えてくばかり。
文学に関する知識は、皆無といって宜しい。
それは今も尚そうです。
しかし、カポーティが誰なのかってのは分かったよ!!


そのカポーティの書いた本作は
面白かった・・・くっそ〜面白い!!むうう。
好きだなあ、僕の好きな雰囲気もりもりだなあ。


を亡くしエレン叔母の家で育てられていた主人公
13歳ジョエル少年は、から手紙で呼ばれる。
父の居る筈のランディングへ辿りつくけれど
其処に住んでいるエイミイランドルフ使用人?ズ―
彼と父を対面させようとしない。
やっと会ってみると
父は目を開けたまま体を動かせず床に伏せ
言葉もぎりぎり数個聞きとれる程。
何かある時にはテニスボールを転がして合図するその人を
ジョエルはミスター・サンソムと呼ぶ。
少年はその沈みゆくと住人たちと、新たに出会った人々と暮らし
戸惑いながら、大人になってゆく。


なんつーかまあこんな感じで良いかな・・・。
全く具体性のない説明で不親切極まりないけども
この小説の面白い所は
ちまちまとした日常の出来事と紛れ込む幻想の描写にあって
でけえ事件がどでんと待ち構えていたりしないのだ。
当然ながら人物一人一人がまた、良い。


ジョエル少年は、非常に平均的な子供らしい子供で
なんとなく意地悪してしまったり
他人に対してアッハッハーな黒い考えを抱いたり
上手に甘えたり
空想の知人が居たり
誰もかれも敵に思えたり
突然、物事がはっきり分かるようになったり
本作が面白いのは、この少年が
これぞ少年、といいたくなるような少年だからである
と思う。


ズ―を見てると
宗教って凄えな、と改めて思う。
こんな高レベルな現実逃避・・・可能なのか?いや
そうでなけりゃ崩壊しちゃう精神をなんとか維持させるには
ある意味での錯乱が必要だったのか。
まともそうで壊れている
活き活きとして疲れ果てた魅力的人物。


ジョエルの出会う二人の赤毛な少女たち。
フローラベルアイダベル
フローラベルは、女の子の嫌な所だけを集めこねあげて作ったような子。
よく喋る、噂好きで、自慢しい。
アイダベルはフローラベルとは真逆に近い女の子で
男勝り、文字通り、そんじょそこらの男にゃ負けない。
ジョエルはこのアイダベルの方とずんずん親しくなります。
仄かな恋心が芽生えつつあるような。
ところが、ある出来事を境に
急に忘れてしまいます。
というかどうでもよくなったような感じ。
一人で勝手に大人になってしまうんですね。


僕は自分で自分の好みをよく理解しているのです。
小説ってのは便利で
見た目の描写がどれだけきっちりかっちりであっても
僕は都合の良い部分だけを抽出、他を排除することができるのです。
だから本当は御年配設定だったとしても
くそ美形な青年に作り変えてしまえるわけです。

本作に登場するランドルフ。
年齢は30半ばくらいだったろうか・・・丁度良いじゃないか。
実年齢より若々しく見えると本編中にもあるし
じゃあ何も問題が無いかって〜と、違う。
ぽっちゃりなのである・・・。
僕の特殊フィルターの前では取るに足らない問題ですね。
ところが今回はなかなかうまくいかなかった・・・!!
何故か!!
それは冒頭でちらっと書いた、映画の所為さ!!


あの映画でカポーティ役を演じた、フィリップ・シーモア・ホフマン
本人に似ていると様々な人が評しておりましたが
カポーティのちっこい写真を見てみたら
シーモアじゃねえか。
シーモアって
FF10のあいつじゃないですよ。
いや〜こんな似てたとはね〜。


それがどう関係するかってったら
ランドルフの描写がどうにも
シ、シーモア?
なんだかどうしてもフィリップ・シーモア・ホフマンがひょこっと顔を出すのですよ。
っつ〜かカポーティ、自分がモデルなのか?
そうではない。
ランドルフのモデルは二人ほど別に居るのです。


かなり梃子摺りましたが
持っている要素は素晴らしいので、このランドルフ。
やっぱ、良い!!
ぽっちゃりに負けないぞ。
病んで酔って白くてふらふらしてて、常に何処かに寄り掛かっていて
消えそうな光のような声で囁いたり、優しくて
金色の巻き毛をした、過去の囚われ人。
ランディングから出ると、一人では歩けず、その場にへたりこんでしまうような
そんな人。
うがああ、素敵だ。
僕の大好きな、うっとりとして気だるげな人。
年鑑を頼りに、世界中に手紙を書き送る、喘息の人。
良いな、良いな、かっこいい、くうう。


女装癖云々は、それは僕の趣味ではないけど
ランドルフの倒錯した心を表す要素として受け入れたぜ。
彼の過去を語る辺りはこれまた面白かったなあ。
夢を見るように目を覚ます人。
好きだなあ、ランドルフ。


この小説が
支離滅裂だなんてとんでもない!!
と僕は思う。
家出未遂も恋の錯覚も、抱く自信もその喪失も
何一つ突飛なことなど無い。
凄まじい表現のオンパレードで、現実外の存在が漂っていたとしても
そのきらめきに目が眩もうとも
その薄闇に不意に躓こうとも。
ただ僕が褒め称えるのは、僕がこれを好きだからで
この世界にあるのは
好きなものとそうじゃないものとそうでもないもの
うんうん、そうだ
何かに対する評価なんて、できるもんか、誰だって
好きかそうでないか以外になんかあるか?!


なんかですね〜。
誰にも内緒で訪れた廃屋裏のがらくたの転がる草ぼうぼうの場所で
弱いオレンジ色のぺしゃれたシャンデリアを発見したような気分。
良いものと出会えたぞ
でも僕だけの秘密にしようかな
(そう思いながら誰かに言いたくてうずうずしているのが
くそがきってもんじゃないでしょうかね??
僕はそうだったし、今でもそうであります!!)


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