孤島の王。。。KONGEN AV VASTOY

北欧、そのうっとりにやけてしまうような、甘美な響き。
神秘的で張り詰めた、触れると砕け散ってしまいそうな響き。
そんな北欧、ノルウェー
の、孤島、バストイ島
其処にはかつて、少年達の矯正施設が在り
この映画は
実際に起こった少年たちの反乱事件を基に作られたそうです。


外界からの絶対的隔離。
に閉ざされた白い視界の無情な美しさは、北欧ならでは、ですね。


殺人を犯したのか彼は、ひそひそ、噂話。
凶暴な(不屈の)目をした少年(というには育ちきってる印象なんだがね)、エーリング
彼は人里離れた孤島に在る矯正施設に連れて来られ
C-19という新しい名前を授かる。
反抗心剥き出しの彼の教育係に、卒院間近の優等生C-1ことオーラヴが選ばれる。
オーラヴはC寮のリーダー的存在で
6年もの月日を此処で過ごし、やっと卒院できる、という状態。
明らかに脱走したがっている問題児エーリングに
自分の卒院まで行動を自粛してほしいオーラヴですが
一緒に生活するうちに友情が芽生えてゆきます。
字の読めないエーリングに代わって、彼のからの手紙を読んであげたり
物語を書きたいというエーリングに代わって、彼の言葉を文字にしてあげたり
微笑ましい。
厳しい規律、日々の労働、課せられる罰、鞭打ち、
洗濯部屋での下卑た秘め事。
エーリングと同じ時期に此処へやって来たC-5ことイーヴァル
痩せっぽちて非力で、爽やかに歌を口ずさむ線の細い少年。
重い物を持つことも困難な彼は、皆と同様の作業はできないと判断され、洗濯係を命じられます

実はそれは、好色(とまでは言えないかもしれないけれど)な寮長の密やかな楽しみの為。
彼はその寮長に繰り返し悪戯されることに。
エーリングの無謀な脱走計画に同行したいと申し出るほど(その計画も結局は失敗するのですが)。
エーリングとの出会いで、眠らせていた正義の心が抑えられなくなりつつあったオーラヴは
意を決して院長に真実を告げます。
ところが院長は弱みを握られているので、寮長に手だしできません。
イーヴァルは絶望の果てに(というよりは逃亡したい一心だったのかもしれませんが)
冷たい海に身をゆだね、自殺してしまいます。
濡れた衣服のポケットに入っていたは、彼の遺言のように寂しくも悲しい。
そうして迎えたオーラヴ卒院の日。
待ちに待った日、だった筈なのに
本土から来た要人に対して(自殺は苛めが原因だと)嘘をついた院長
この先も断罪されることのないであろう寮長
心と頭に渦巻く怒り(だけでないにしても)が一線を越え、暴走するオーラヴ。
寮長に向かって殴りかかります。
そんなちょっとした暴動は大人達によって速やかに鎮圧され
加勢したエーリングも一緒に、凍える地下牢のの中へ。
虐げられているという点で子供達と似たような境遇にある使用人の助力によって
なんとか檻を脱し牢を出るのですが
オーラヴは片足を負傷
だがそれが何なのだ、彼は憎き寮長を追い、白く曇った世界で彼を追い詰め
惨めに腰を抜かしている相手に、強く言い放つのです。
「立て!」
その誇り高き声。
崩れ雪崩れる日常。
最初はなだらかに、徐々に激しく、猛烈に
動き出した少年達は自由へと突進してゆきます。
規制されていた食料を漁る者、破壊行為にでる者、武器を手に取る者。
抑圧され続けてきた反動は大きく、憎しみは深く
それに集団心理の正常さは麻痺し易く
更に残酷行為への恍惚なんかも手伝ったかもしれません
少年たちは寮長を殺しかねない状況に。
なんだかんだ終始一貫して冷静なエーリングは、寮長の消えかけの命を助けてやります。
院長やその他大人達は船で島を脱出。
院長室の椅子にはオーラヴの姿。
かかってきた電話に出たエーリングは、「国王に話がある、自分はバストイの王だ」と言ってのけます。
この事件に、が出動。
丸腰状態の少年達の反乱を鎮圧する為にとんでもない数の兵士が島に上陸。
追われ、捕縛されてゆく子供達。
エーリングとオーラヴは凍った海を渡って逃げようとします。
途中、氷の薄い箇所があり腹這いになりますが
それでもエーリングの体の下で、氷は割れ砕けてしまいます。
オーラヴは懸命に彼の手を掴みますが
水はあんまり冷たく、それにエーリングは(如何に成熟した外見であっても)まだ子供で
彼が力尽きて沈んでゆく場面は、タイタニックのディカプリオの沈みゆく場面と酷似しておりました。
オーラヴは一人、ただ只管に
自由の方角へ走ってゆく。
時は経ち
面影を残しながらもすっかり成長したオーラヴは、島へ帰って来ます。
完成されなかった友人の物語を連れて。


オーラヴとエーリングの友情のなんと熱いこと!!
軍人に追われ、足を怪我したオーラヴがもう走れない限界だ、と言うと
エーリングは彼をおぶって先へ進むのです。
そんな彼等の別れざるを得ない場面は、悲しい。
できることなら二人とも幸福な結末に導いてあげたくなるような、過保護な気持ちも少し湧く。


この二人のキャラクターがとても良い。
反抗心の塊のようなエーリングと、状況に順応した賢そうなオーラヴ
見た目にも
眼光鋭く粗野な者と、首に布を巻いてお利口そうな髪型の者
(このオーラヴの首スカーフスタイルが、貴族っぽくて素敵なのです!!)
そんな彼らがお互いに影響し合い、エーリングはオーラヴに心を開き
オーラヴの方の変化は顕著で
日増しに(ある意味)壊れゆく彼が、この映画最大の見どころに思えます。
彼の内で燃えたぎる炎のまばゆさは、彼の理性や思考をじわじわと呑みこんでゆくようですが
つい最近来たばかりのエーリングと比べて
彼の耐えしのんだ期間は6年。
しかも自分の本来持つ感情の一切を排して、優等生として過ごしてきたのかと思うと
本編中盤以降のプッツンぶりも当然です。
更に彼は、自身の優しさに心かき乱されてゆくようです。


エーリングが紡ぐ物語は
銛を3本打ちこまれても死ななかったと、船乗りたちのお話。
次第に物語と自分たちの状況とを重ねて語りだすのが、少年らしく、いじらしい。
(卒院するオーラヴを、遂に船を降りる船員に見立てた辺りに
彼に対するエーリングの想いが滲んで、僕は勝手に感動するのです。)


厳しい状況下で、物語に夢中になるというのは
少年たちの一種の現実逃避でもあるかと思われるのですが
子供達はいつでも夢見ることの出来る生き物なのだなあ、と
改めてその精神性を讃えたいですね。


オーラヴが寮長に「立て!」と言う場面は
こんな表現は適切ではないと分かっておりますが
かっこよかった・・・です!!
バストイの王というのは
或いは施設を取り仕切っていた院長か
ある個人にとっては寮長であったか
大人たちの織り上げる矛盾した不条理の世界そのものか
それとも子供たちに比類なき衝動を与え、尊敬を勝ち得たエーリングか
兎にも角にも
僕はあのオーラヴの「立て!」の高貴な雄々しさ、凛々しさが
最も王と呼ぶに相応しかったと・・・痺れました!!
(というよりは王子のような姿なのですがね。)


暴動を鎮圧する為に島へ来た軍の様子は
さながらメタルクウラの群れでした。
流石の悟空とベジータも、これには絶句してしまうのでした。


エーリング、何故なんだい?
もう少しあっち側の、だから、二人もっと離れて氷の上を這えば
なんとかならなかったのかい?
誰よりも自由を求めて足掻いた彼の静かな
たった一人の友人だけが見た静かな
静かな生命の終わりは
悲しい。
そうして走り出すオーラヴの後ろ姿が、白い霧のような向こうに消えてゆくのが
なんともいえず、良い。


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