DOUBT

カトリックの学校が舞台でありますと
厳かで哀しく、美しい映像が堪能出来る、というのも魅力の一つですね。


規律を司るような厳しいシスターアロイシス
純真無垢を絵に描いたような若きシスター、ジェームズから
フリン神父が特定の少年に興味を持っているのでは、という疑惑を相談されます。
時代に合わせて開けた教会へと変わっていきたい神父と
現状を守りたい校長、シスター。
考え方からして違う二人は、疑惑を巡り対立するのでした。


と、書くとミステリー映画の色が濃そうですが
実はそうではないのです。
ミステリー要素で惹きつけ、実際はもっと違う場所にスポットライトが当たっているのです。


疑惑の渦中の少年は肌の色が違う上に
どうやら男の人が好きなのかな?みたいな性質のようで
父親に暴力を受けております。
普通の学校に通わせていては殺されてしまうので、この学校へ送ったのだ、と話す少年の母は
例え神父が彼に手を出していようが
彼に手を差し伸べてくれるのなら、卒業までそれで良い、そっとしておいて欲しい
と涙するのです。
あの子に罪は無い、性質の為に彼を責める事など出来ない、と。
神父を追い出したいアロイシスに
彼を犠牲にしないで、と訴える母の無力さが、哀しくも胸に残りました。


フリン神父とアロイシスは対照的な存在として描かれています。
生徒たちから恐れられているアロイシスと
世俗的な歌を愛し、爪を伸ばし、ボールペンを使う神父。
それぞれの主張があり
それぞれの信仰があり
それぞれの感情がある。


神父は、あの少年には助けが必要である、と考えており
実際どんな関係なのかは最後まで明かされません。


アロイシスには、大きな罪を犯し、告解し、赦しを請うた過去がありますが
その過去は最後まで明かされません。


ジェームズは感情を抑えるタイプですが
アロイシスに対してほんの少し気持ちをぶつけるシーンがあります。
目に涙を溜めて声を震わせながらも、決して泣き崩れはしない彼女の強さ。
いじらしくもあり、その可愛らしい演技は、見事。


ジェームズは対立する二人の間で揺れながらも、別の次元に立っています。
彼女の位置の絶妙さによって、この物語は更に素晴らしい輝きを放っているのかも。


さて、この作品は、キャスティングが良過ぎるほどに良いのですが
当たり前と言えば当たり前なのかもしれない配役。
けれどだからこそ、矢張り間違い無かった〜って結果ですね。


神父に扮したフィリップ・シーモア・ホフマン
彼はその体型のぽちゃ加減もあって、暖かい包容力を感じさせつつも
怪しさを含んだ雰囲気が良いですね。
春を忘れないように、と本の間に押し花を挟んでいるような神父の優しい心は
あのぽにょっとした表情によって、一際可愛らしく映るのでした。


そしてそして何より
アロイシスに扮したメリル・ストリープの演技は圧巻、流石ですね。
迫力たっぷりの口論シーンは、思わずゴクリ、です。
その素晴らしさがマックスなのは、ラストの、ジェームズと会話するシーンですね〜。
強く厳しく在ろうと、自らの信じる道を突き進もうとした彼女が
止められず広がり育ってしまった疑いの心に泣きだすシーンです。
その泣き方に、ずきゅぅぅぅぅぅぅん、でした。
しゃくりあげて泣くんですもの!!
幼い子供のように
見えない恐怖に震えるように。
貫禄の演技。
僕的映画史に残る名シーンでした。
このシーンだけでこの作品の価値はぐぐ〜いっと上がるほど、僕は好きです。


静かで、派手な演出の無い物語を
役者達の見事な演技が鮮やかに彩っているのでした。


それにしても修道服ってかっこいい。
腰からぶら下げているロザリオ・・・素敵だ!!ほ、欲しい〜。
レプリカで良いんで、下さ〜い。


神父が教会で説教する場面が何度か出ますが
とても簡単で分かり易いのに
凄く、おぉ!!と感じたのが「」についてのお話。
屋根の上で枕を裂き、風に乗って回収出来ないほど飛んで散った羽
それこそが噂の正体である、というお話。
幻想的な映像であるのに、内容は非常にホラーショー。
其処が良かった。


これは人間そのものが描かれた作品。
何が善で何が悪かなんて、答えの出ない物。
正しいと信じた道が本当に正しいかどうかなんて・・・!!
更に、誤っていると分かっていても止まれない事もあるし。
どう生きれば良いのか、貴方ならどうする?と問い掛けられているようでもあったなぁ。


最近に観た映画の中では群を抜いて面白かったです。
コンパクトでありながらも、終始、緊張感に溢れ
あの終わり方は巧みだった・・・!!
映画は火薬の量じゃぁねぇぜ!!


ダウト、疑い、見えないけれど確実に、心を浸食する物。


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