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薄べったい羽音だ
弱々しく、右往左往
正しい筈の方角へと
信仰が鳴らす至福の道
飛び交うものは嘘物
嘘、嘘、出鱈目

そうやって行ってしまったよ
彼女達は行ってしまった

白く、淡い羽音だ
瞬いている、鼓動だ












      こんばんは、また明日
      明日こそは光の中で目を瞑らずに、息が出来れば良いのに
      明日こそは息を潜めずに、皆の顔が見れれば良いのに

      こんばんは、また明日
      明日こそは誰かに向かって、また明日ねって笑えたら良いのに
      明日こそは
      何事も無く目が覚めた朝を、神様に感謝できたら良いのに

      こんばんは、また明日
      明日があるから、もうお別れ
      明日の為に、もうお別れ
      この瞬間の溜め息に乗って、明日が来る、明日は其処で
      待ち伏せしてる
      だから今だけ眠らせていて
      今晩だけは、今晩は











うねうね生えた心の樹
根っこは蜘蛛の巣
枝にはフォーク
僕等の育てる心の樹
萎れて枯れても星座を見ても
青く咲いてる
青く咲いてる














      闇を撃て
      真っ暗闇を
      奇怪な夢を
      おどけた鳥を
      五月の雨を
      白磁の蛇を
      虚構の家を
      しなびた朝を
      真っ暗闇を
      突き抜けてゆけ
      闇を撃て
      撃ち落とせ















今朝、降り損なった雨が、僕の上にだけしとしと落ちる
もう他の、誰の肌にも触れないでおくれ
そうでなければ嫌
そうでなければ嫌


















      押し寄せてきた、また愛しさが。
      今度こそ我慢できるだろうか。
      そろそろ過去に潜るのをやめて、あの時を繰り返すのをやめて、
      子供の頃に思い描いてた未来への回答を、
      素晴らしいって一言で言い尽くせた筈の未来への回答を、
      今度はきっと、明日にはきっと。

















男の子っていつ孵化するの?
ティラノサウルス追っかけてるうち

女の子っていつ孵化するの?
ママに内緒でおめかしするうち

















     山積みの問題のてっぺんに登って
     積み重なり結合する問題を一挙に見下ろし
     休息の体勢になる
     休息は必要だから
     休息して万事に備えなければ
     あらゆる面に於いて整えなければ
     問題は山積みで
     解決するのは僕の役目なのだから















やらなくてはならない事をやっつける
(すると椅子を引き摺るような悲鳴が聞こえる)

やらなくてはならない事をやっつける
(すると一部からは称賛され、一部からは罵倒される)

やらなくてはならない事をやっつける
(すると左の瞼の神経が引き攣る)

やらなくてはならない事をやっつける
(すると私の中の小さな私がばったり倒れる)
(それはそれで都合が良くもあるので気にしないよう努める)
(その所為か最近は空席が目立つようになった)
(椅子から転がり落ちた私達は、しかし何処へ行くのだろう?)










      彼等は戻って来た
      忘れ物を取りに来た
      どうしましたと訊いたら
      どうもしないと答えた

      彼等はうろうろしていて
      ああ貧相な面持ちで
      どうしましたと訊いても
      どうもしないと答える

      電灯も無い此処の角
      言ってくれて良いんだよ
      忙しいのは君だろ
      泣きかけの目で生きてる














故郷はあの娘の幼顔
今も黄金の夢見顔
三つは賑やか、一つは泣いて
あともう一つは何処へやら
木馬に乗って、何処へやら


















      時が巡るにも遠回りだとか近道はあるの?
      あとどれだけ、あとどれだけ
      あとどれくらい、あとどれくらい
      揺り籠の傍に在る、はららかな発狂
      次に来る春は清らかでありましょうか?
      清らかでありましょうね
      きっと、そうでしょうね


















弱冷房の悪い夢
明日、明後日、明々後日
眠くもないのにうとうと、僕は
もう目を開けていられない
重力に立ち向かえない
落ちて、落ちて、落ちてゆく












      結んで、開いて、結び直す
      その内いつか、千切れてしまう


























      突然に放り込まれ、害虫みたいに丸くなる
      何を言っても無駄だと悟って、何を話せば良いか分からない
      物欲はある、君とは別の所に
      君の知らない人種を、僕は沢山知ってる
      一卵性の他人なんて気味が悪いだろう?
      優しいと言われて貴方は、自惚れているんでしょう?
      もう良いよ、もう要らない
      貴方は少し、頭が変だ




空想を飼いならすのが上手で
それが最善策であり
唯一の手段でもある

気味が悪いとぶたれても
それ以外には方法が無い

自分で自分に気付いてしまうのが
彼にはとても怖かった

彼にだけ見える彼の友達

それを叱らず
抱き締めてあげて

この世界を出て行こうとしてる
誰にも内緒で、たった一人で

彼の背中は、ひび割れている




      私は貴方に
      貴方だけに
      贈りたい物があったのに
      貴方は皆に花冠を
      贈って
      そのまま帰らなかった

      回転ドアを潜るみたいで、ひらり、もう居なかった

      貴方が手に入れたのは
      空を飛べるマントか
      星になれる飴玉
      誰も知らない魔法で、細かな血管の端まで
      透けて
      行ってしまった

      花冠を片手に、貴方は

      貴方は

      貴方は

      私にかけた魔法を解かずに
      貴方は





サルべーション・アーミー
こっちへ来ておくれよ
「どうした?」って訊いて欲しい

サルべーション・アーミー
此処まで来ておくれよ
とっても重要な事なんだ

それなのに

何故、僕等に銃口を?

サルべーション・アーミー
教えて欲しいよ













      新聞の記事を気にする君に
      明かりをあげよう
      見上げなくとも、天井から垂れさがるシャンデリア
      僕は半歩、退がった
      でも君の目は覚めない












お利口さんは宇宙科学で暇潰し
彼等の哲学
本を書くのに大忙し

なんと傲慢な事だろう

しかし僕等の心は躍る

僕等の指が星をなぞれば
耳元の嘘も希望に変わる
それが明日のビスケットより
どうしてこんなに嬉しいのだろう

月の満ち欠けが彼等と重なる
満ちていた物も必ず欠ける
必ずそれはやって来る




      騒々しい回想を繰り返す内に、ふと気が付くのだけど
      前世の事や、たった今の自分でさえも
      何者かという問いに答えなどありはしない

      横たわる事実だけが間違いの無い本当で
      それだけでは心細いから
      他の自分を探し続ける

      隣で顔を覆う彼女もかつては、光を放ちながらうねる電気鰻だった

      古い映画のポスターを友人の部屋で見付けると
      突然、彼が素晴らしい人間に思えてくる

      答えとしては不確かでも、それで充分なんだ





外へ連れ出す笛の合図だ
いつもどおりの時間だね
けれども今日は行けそうにないや
先生の声が刺さっているから
僕の心臓を刺して刻んだ

赤毛の妖精が前を横切る
縞縞の脚で軽やかに踊る
そして行ってしまう
僕だけ残して

外へ連れ出す笛の合図は
皆と一緒に、溶けて舞い落ちた






      議論する。
      彼女はたった一切れのチーズにだって、言いたい事は山ほどあるのだ。

      朝食の香り。
      あの山ほどの彼女の思い。
      あの山ほどの彼女の背伸び。

      繋がっていた筈の空は途切れて
      閉ざされたのは小さな蛍。
      彼は彼女を待っているけど、彼女はそれを知らずに眠る。

      上れ、下れ
      山の向こうへ。

      空いたままの椅子
      手付かずの皿
      言いたい事は山ほどあるのだ。
      言いたい相手が此処に居ないだけ。







ライムグリーンのクレヨンで
壁いっぱいに警告、忠告
どれだけ彼等を不快にするか
必要のない考えだ

枕の中に縫い針、マチ針
どれだけ彼等は不快になるの
どれだけそれを与えられるの
必要のない考えだ
まるで意味の無い考えだ








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