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私は旅をしていた

月の燃える国にも、灰の降る国にも、足跡を残した

涙の枯れた国へ行くと、小さな坊やが駆けよって来て

籠いっぱいの木の実を差し出し、恥ずかしそうに微笑んだ

「軍歌の轟く遠い国へと、これを届けて欲しいのです」

すると木の実も恥ずかしそうに

なんて見事な、赤い色





      狼が来る、狼が来る

      だから羊の番をしなくちゃ

      壊れたハーモニカを持って、豆のスープを飲みながら

      僕等は昔話が好きで

      小さなテントいっぱいに、言葉を紡いで笑ったね

      君は遠くへ行ってしまって

      スープの香りも忘れたんだろ

      話した事も忘れたんだろ

      羊が喰われたって良いんだろ

      狼が来ても、君は分からない

      それほど遠くへ行ってしまった

      僕が毎日泣いてるなんて

      君は分かりっこないんだね

                                   幾ら近いと言ってみたって

                                   天国行きのチケットは買えない

                                   楽園もそう、異国の地

                                   受け入れてさえくれれば良い

                                   満天の星は素晴らしいけど

                                   それを遮る屋根も愛しい

                                   嫁いだあの娘の横顔みたいな

                                   闇夜に浮かぶ白い月

      雪の日

      白に覆われ、いつにも増して色を失ったこの街を徘徊する

      異国の歌が耳に心地よく

      呆れ顔の人々は皆、モザイクの向こう側

      この白に埋もれて、溶けてしまえないか

      太陽の下、突っ伏して、あれやこれやと念じてみるけど

      橋は脆くて、あとどれだけの重みに耐えられるかどうか

      双子の少女がこちらに気付いて、手を振り微笑む

      可憐な姿は影となり、焼きつき乱れ、蝶のよう

      ひらりひらりと、揺れて離れる


人工知能に命が宿れば、僕等は神に近付けるのか

そうだとしたって

代わりに壊れる秩序の行方を、見届けなければならないでしょう

逆らい過ぎて

争い過ぎて

盲目になった

おめでとう

善意の欠片よ

良心よ

その行方を一体、誰が

誰が見届けてくれるのでしょう


      意地っ張りでぶりっこな君は、遊泳禁止の海の中

      あぁ、其処で

      脱皮するんだ、蛇みたいに

      ネガティヴを取り除こう

      脱ぎ捨てて、蝶みたいに

      儚くても、燃えるようなきらめきの中に居たい

      あぁ、其処で

      ネガティヴを取り除こう

      ネガティヴはもう要らない

      意地っ張りでぶりっこな君と、遊泳禁止の海の中




カーペットの下、土竜の巣の上

たった一ミリ、クローンの支配

それを、自尊心が許さない

誤魔化す事は納得する事

何が重要か、僕が決める事

自信が在る

いや自信だけ在る

だけど

ピザ一切れでは足りないくらい、僕はいつだって空腹なんだよ




      お菓子じゃないんだ、甘くないから

      玩具じゃないんだ、説明書が無い

      着れない履けない描けない聴けない

      だぁれもそれを欲しがらない

      知らないガレージ、彼女は一人

      一体、何を売ってるの

                                  僕等は全てを否定する事も、肯定する事も出来る

                                  全てに希望を抱きながら、同時に、失望し続けている

                                  その日着る服は気分で選ぶし、考え方も気分で変わる

                                  僕等はそういう生き物なんだ

                                  何でも自在に決められるんだ

                                  イエスでもあり、ノーでもあるなら

                                  どちらでもあり、どちらでもない

                                  何もかも全部叩き壊して、新しい国を作ると言うなら

                                  僕は必ず、協力するよ

                                  その日の君を、迎えに行くんだ

      馬鹿だな、と

      叱っておくれ、愛しい人

      暴力的な形をしてる

      私は、私は

      可愛い背中を包み込む度

      戻りたい日々の岸辺に佇み

      子守唄さえ歌ってくれれば

      私は、私は

      私は、私は





                          誰かの為に生きたりしないで

雨垂れに似ている               十字架なんかに縛られないで

彼はとても、僕よりずっと           神の子供と名乗らずに居て

打たれ弱くて世間知らずだ          不法投棄の愛に似た人

目を離すとすぐ迷子になって         どうして

移り気な彼、僕よりずっと           どうして

眩しい人                     願いはいつも零れて落ちる

                          誰かの為に生きたりしないで





      不運は球体

      転がり続ける

      転がり続けて、もう戻らない

      僕はそろそろ、貴方が扉を開けて、顔を出す頃だと分かったんだ

      僕を見付けて微笑む貴方を

      僕はずっと、待っていた

                                 境目を作って銃口を向け合えば、心安らぐって言うのかい?

                                 それは出鱈目だよ

                                 君は弱くなった

                                 随分、弱くなった

                                 つまりは、宇宙に在る星達を誰も管理できない

                                 でも、それが良いんだよ

                                 手を伸ばせば届くから、壊しても許されるのかい?

                                 欲しがりな君は可愛い

                                 それ以上に悲しい

                                 言い訳を考えてはナイフを振り翳すほど、臆病者になったのかい?

                                 周りばかり気にしている

                                 隣に座って話せば良い

                                 君が笑えば、彼も釣られて笑うんだ

                                 持っていたナイフで、ケーキを切り分けよう

                                 君になら上手く出来る

                                 君にしか出来ない

      病めども病めどもやめられず

      悔やんで泣いても飽き足らず

      それで貴方の目映さに

      眩んで蹌踉めき崩れゆく

      懐かしむ間は殆ど無くとも

      手を叩く仕草、喜ぶ姿は

      変わらぬ友の、あどけない人


僕が大切にしていたのは、砕けた角砂糖の一粒

君にはそう映っていたに違いない

僕のポケットの中には、そんな物ばかり詰め込まれている

そんな物ばかりで、はち切れそうになってる

そんな無価値な物達で

だけど君だって子供の頃は、ポケットの中に何を入れてた?

その頃の自分に向かって同じ事を言って御覧

ところが君は、あっさり言えてしまうのだろう

何の意味も無い

君は言うんだ

何の役にも立ちゃしないよ、と


      後ろ姿の人の群れ

      観覧車は、音も無く点滅するばかり

      君に昨晩、置き去りにされた

      悪い夢を見たんだね

      それは君をとても疲れさせたけど

      注射が必要なほどでは無かった

                                 机の上のハムスターは、開けた場所で迷子になってる

                                 酷く不気味な無人のアパート

                                 意味の分からない彫刻に、僕等は毎日、頭を下げる

                                 息を潜めて誤魔化しながら

                                 それも終わりだ

                                 今夜、あの像を蹴り倒す

                                 粉々にして、唾を吐いてやる

                                 もう耐えられない、耐えたくないんだ

                                 生まれた時から嫌気が差してた

                                 自分を抑える方法を、見失うのに苦労した

                                 部屋のポスターを剥がすみたいに、僕の気持ちを剥いで捨てて、まだ

                                 「良い子」を演じて欲しいなら

                                 もうおしまいだ

                                 今夜、あの像を蹴り倒す

                                 粉々にしても足りないくらい、もう耐えられない

                                 歪んだ日々など

      不公平である事が大前提なら

      この蔓延した暗黙にも納得がいく

      矛盾を取り払う事は出来ない

      それをきちんと理解した上で

      僕等はまだ空を見上げる

      崩壊はもう始まっているのに

      両手は、頭を守るには脆過ぎる



君は、僕が否定した物を

更に否定し直す

手を加えて、腕を組み、首を傾げては、歩き回る

ほら、月曜がやって来るよ

オルガンの音は僕だけに聴こえてた

月曜がやって来たら

君は首を吊ってしまう

その前に僕を否定するのを、君は忘れはしないだろう

だって月曜がやって来る

君は静かに立ち上がった



      知らない人よりずっと知ってる

      見えない人よりずっと見ている

      聞かない人よりずっと聞いてる

      このまま居たいと思うのも、飛び出したいと思うのも

      良い事なのに、叱られる

      どっちみち僕等、「足りない」を求め

      埋める作業に夢中になる

      それが好きなんだ

      幽霊が居れば幽霊に、野良犬が居れば野良犬に

      怯えて暮らす悪趣味さ

      納得している全員が今日も、時計ばかりを気にしている

                                                              そう思うと、僕の服の袖を掴む白い手の、なんと幼い事か。

                                                              この手を裏切ってはいけないのだ。

                                                              それは僕の為でもある。

                                                              彼の心が少しでも、穏やかな光の元を離れてしまうと

                                                              僕は闇の中を、彼を捜して彷徨わなければならない。

      だーれも知らない秘密の場所に、僕だけの庭を作るんだ

      怯える理由が一つも無ければ、眠り続けて居られる筈だよ

      毛布の中でやっと安らぐ、小さな祈りが僕の心臓

      信じてる振り

      優しい振り

      分かってる振り

      もう良いよ

      悲しくなるのは我儘なんだ

      差し伸べてくれた手が冷た過ぎて、離してしまった僕の所為





醜く騒々しい、それは妄想

捨てておこう

君は生まれて来た時に、何を見て、何を聞いたの?

泣き嘆いて、ママを呼んでた

小さな手の平にもちゃんと、運命は刻まれ、逃れられない

君は「未来」を見ている

そして欠伸をしている

君の「未来」だ





      持ち手の無いカップに、不満を注いでいる

      その内、溢れ出すから、誰も触れられないんだ

      知らん顔の君、帰りたがっている

      焼き上がるケーキを待たずに

      そわそわしている

      マナー違反さ、何もかも

      だけど痛いほど僕はよく分かる

      よく分かるんだがなぁ



怪獣ごっこに夢中の子供

飛行機雲を指さして、邪魔だなぁ、と呟いた

あの頃に

戻れるだろうか

とろけた甘い空想が見たい

僕は果たして帰れるだろうか

サイレント・ディジィーズ

悩みの種だ

あの頃に戻れないのなら

黄色い帽子も必要無いね


                                                                           青い糸を下さい

                                                                           細く途切れそうな、か弱い糸を

                                                                           赤い糸を下さい

                                                                           柔らかく優しい、燃えるような糸を

                                                                           黒い糸を下さい

                                                                           清らかで寂しい、貴方に似た糸を

      可不可の境界を知る権利は、誰の手の平の中にも在るけど

      それを試す事を、勇気とは呼ばない

      君が小さな模型をピンセットで組み立ててる間

      僕はじっとして、椅子の上から降りられない

      可不可の境界を越える事はある意味、夢の実現にも等しい

      錯覚だと笑うのは、弱虫かもしれない

      君が小さな模型に細い筆で色を塗る間

      僕はじっとして、壁紙と仲良くなる

      半分だけの時間

      隣の家の灯りが消える

      椅子の上から降りられない

      僕は、今でも




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