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パレードが来るよ
サーカスが来るよ
もうこれから先は、楽しい事ばかりだよ

王さまが来るよ
綺麗な服を着て
もうこれから先は、祈らないで良いよ

白い闇に窒息する
光が肺を満たすから

こぼれたミルクに叱る人は、もう居ない
引き出しの中の聖書も
僕にはもう必要ない

パレードが来るよ
サーカスが来るよ

泣かないで良いんだよ

君にも祝福を

      拗れると、案外すんなり解けてしまう

      単純な仕組み

      チープな約束

      破れた意味は

      破いた彼は

      もう一度結びたがって

      あっちへふらふら

      こっちへふらふら

      迷子のゴースト

                                     気球に乗って昇ってく彼女は

                                     僕の良心を持って行った

                                     空の上からそれを砕いて

                                     降り注がせるつもりらしい

                                     つまり、こういう事なんだ

                                     「お土産なんて期待しないで」

                                     「パーティなんか開かれないし、言いそびれてた話も無いから」

                                     持って、持って行ってしまった

                                     僕の良心は複雑骨折

                                     セロハンテープじゃ治せない







      母に誓うしおらしさが

      音をたてて剥がれてゆく

      別に要らないから、放っておいて良いや

      父を慕う純真さも

      今はもう失くしたけど

      別に要らないから、捜さなくたって良いや







                                     どうだい?調子は

                                     君は答える

                                     基本的には良くない、と

                                     曖昧にしてる

                                     君は避けてる

                                     映画館での寝心地の良さ

                                     電車の中での寝心地の良さ

                                     誰も居ないに囲まれている

                                     それのなんと落ち着く事か

                                     君って奴は

                                     忘れ物を取りに戻ると

                                     確かに言った

                                     確かに言った筈なのに

                                     どうして此処に立ったままなの

      ランプの灯を吹き消して僕が見た夢と言えば

      気の毒な二十日鼠

      うろうろと彷徨っては、肩を落とす、震える

      手で掬い上げようか

      でも僕は居ない

      飽く迄これは夢だから

      どうにでもなれ

      別に良いさ

      只、一つ、気掛かりなのは

      あの子、泣いていやしないだろうか

      それだけ、とても

      気掛かりで

天の神様の言うとおり
どれにしようか迷った時は
教わったのはそれだけだけど
なんて印象深い人
僕の方を見る時、決まって
何かを質問する彼は
彼は良い人
父さんがそう言ってたもんね
あれやこれやと訊いて来るんだ
壊れた時計のリズムでずっと
あれやこれやと喋ってるんだ

八月のある日、姿を消すまで
どれにしようか迷ってたんだね
占って
天の神様の言うとおり
八月のある日、姿を消した
彼は大丈夫
父さんがそう言ってたもんね
壊れたラジオのノイズみたいに
今でもきっと、喋ってるんだ

      叱られて一人死にました

      褒められて二人死にました

      押されて一人死にました

      ついでに二人死にました

      迷子の一人も死にました

      友達も二人死にました

      去年のあれはクリスマスの夜

      僕は笑っておりました

                                  穏やかで居る為にはどうしなければいけないのか、ちゃんと分かってる

                                  だからこうして鍵を掛けてる

                                  いつでも、僕は

                                  明かりなんて無い方がよっぽど落ち着く

                                  好きな時に好きなだけ、自分の中に灯せば良いから
                   

      勘弁してくれよ、と、彼

      あぁ、彼は酷く疲れていましたから

      静かに座っていましたよ

      黙って静かに静かに

      背を丸めて

      首もだらりと垂れていました

      それでも両目は見開かれたまま

      待っているのか、待たせているのか

      働き者ではありましたけど

      彼は理由を持っておらず

      それが訪れるのを只

      静かに待っていたのです

                                  宝探しは得意じゃないのに、いつでも何かを見付けたがってる

                                  どの額縁も君に似合わず、落ち葉を拾う仕草は虚ろ

                                  フランス製の古いコインと、動き方すら忘れた蟻と、絵日記の中の兜虫には

                                  反論をする暇も無い

                                  君の、嘘っぽい所が好きだ

                                  こんな風にね

                                  お別れ会での然も悲しげな

                                  然も悲しげな曲の妙

                                  アコーディオンが欠伸している

                                  電子レンジも、グラスの水も、外の乾いた靴音さえも

                                  誰でも皆

                                  君以外はね

      悲しい顔をしなくちゃいけないのに

      冷めてゆくばかり

      ヘッドフォンを装着

      他人事みたいで気にならないや

      なに考えてるの?

      さぁね、どうだろう

      潜れば潜るほどに、寒い

      指の皮が剥けるくらいに

      積み上げたトランプのタワーも

      吹き崩してしまったんだ


青虫毛虫
体に毒だと彼女は言った
一匹一匹、指で抓んで
丁寧にそれを潰していくの

二度と無いような燃える空の日
道案内を拒んだ僕に
体に毒だと彼女は言った

何食わぬ顔で
何食わぬ顔で
舌の上には蝸牛

いとも簡単に
全て円満に

二度と無いような燃える空の日

彼女は泣くの
毎度のことで
それはとっても
体に毒だ

      花火工場の爆発事故だ

      あれは鮮やかな光の群れ

      本物かどうか疑わしいほど

      くらくら眩しい光の帯

      四方に伸びて

      八方に散って

      レンズの中には収まりきらない

      歓声は遠く、窓越しの世界

      誰も怖くて近付けないよ

                                  見上げれば息が詰まる

                                  此処は四角い、ベランダ

                                  ぐちゃぐちゃの思い出を、空に葬る場所

                                  昇ってく昇ってく

                                  なのにまだ眠れない

                                  夢の中、迷子の羊

                                  僕の前を横切らない

                                  昇ってけ昇ってけ

                                  あと一度も思い出さない

                                  空は蛍光黄緑

                                  焼け焦げたプラネタリウムだ

                                  閉館の時間には、此処を出て行かなくちゃ

                                  欠伸をする僕の隣

                                  やっぱり帰って来たんだね

                                  床の上、おどけて転がっている

                                  帰って来たんだね

                                  僕の願い事



      放っておいたらビスクドール

      割れて粉々

      椅子の上にちょこんと座って

      いつの間に割れて

      また誰も居なくなった

      小さな屋根裏


                                  限定していた期間を、リモコンで延長する

                                  貴方の百の口癖を、忘れないようノートに写す

                                  何処までは行けなくても

                                  白い息はまた少し高く昇って

                                  見上げる事を促している

                                  首の骨は鈍く呻いて

                                  大きくなり過ぎた頭を支えきれない

                                  今日という日を振り返れば、誰より深く潜る夜

                                  僕は見た

                                  貴方を見た

                                  十七番目の口癖と、優しい小指が欲しかった

      蛍光緑のプラットホームは

      ポスターの跡で賑やかだ

      最後の電車は僕だけ乗せて

      線路を辿らず潜ってく

      思い描いてた通りの景色は

      いつまで経っても二駅向こう

      アナウンスは無い

      何も持たずに来たつもりなのに

      僕の手の中

      鮮やかな孤独

      くらくらするほど

      華やかな孤独





訪ねて来ないで
家での僕は普通じゃぁない
証明してあげたいけど
訪ねて来ないで
悲しい事に、空っぽなんだ
何も無い
この家、壊れているから
冗談とかじゃぁないのに
何故みんな笑うの?
訪ねて来ないで
誰かと比べて僕を
幸せな被害妄想の虚言症だと笑えば良い
ひょっとしたらそうなのかも
だって家での僕はなんだか
ちょっと、おかしい





      満員の非常階段

      肺の奥迄、絡む赤い糸

      一欠片一欠片

      剥がれ落ちる蝉、夢現

      あやす様に揺り起して

      気が遠くなる、滑らかに

      真昼に霞むグラウンドの脇

      僕の意識は飛んで行く

                                                                   どしゃ降りだ

                                                                   君の想いは集中豪雨

                                                                   立ち尽くしたまま濡れてゆく

                                                                   溺れた蛙が流れて行って

                                                                   警報だって発令中だ

                                                                   じわじわ滲みる君の叫び声

                                                                   降り注いでる

                                                                   止まないね

      街灯も脆弱なら

      蛾の羽音も聞こえない

      どうしてあれを告げたのか

      口を滑らす僕等じゃないのに

      空の理科室

      空の理科室

      実験結果は御覧の通り

      梯子みたいな彼の手首を

      僕等は決して見逃さない




蓮華、ライラック、凌霄花
パセティックに咲く
溝鼠の歌
春雨、馬鈴薯、ピストルを向けて
孕んでいるのは
針鼠の歌
繰り返している
頷いている
来世での話、耳に胼胝
夢中の御様子
忘れる息継ぎ
正気じゃないよね?
熱でもあるの?
蛇足、浸礼、スペキュレーション
別次元の事
どれも蚊帳の外
僕は蚊帳の外
いつも蚊帳の外



      晴れやかさを引き替えに

      まだあどけない切り札は

      君の願いを背負うには

      余りに幼かった

      頭から真っ逆さま

      真っ逆さま

      1階の台所で

      うつ伏せに倒れてる

神経質の集まるお茶会
彼女の息子は呼ばれていない
嘘を吐くのも吐かれるのも
そんなに悪い事じゃぁない
訪れるのは、祭日の午後
抱く悪意を隠そうとしない時こそ
あぁ
彼は不快に思う
蜂蜜色の、カップに注ぐ舌触り
肖像画
もう一度よく話し合わずに
彼女は彼をぴしゃりとぶった
クラッカーの上のチーズ
フルーツ、ジャム、それから
彼女は彼をぴしゃりとぶった
以来、彼とは喋っていないと
何とも無しに言ってのけられる
上品そうに微笑みながら
何とも無しに聞いてのけられる
彼女は彼をぴしゃりとぶった
御機嫌よう
また来月のお茶会まで
また来月、その日まで




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